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Dr.村尾「私のお勧め第2回」

2017年07月09日

テレビドラマ「コウノドリ」

ブログこうのどり.JPG


昨年暮れに放映された、産婦人科医療を描くテレビ番組「コウノドリ」、ご覧になっていましたか?
現実にはありえないような「スーパードクター」が出てこない、等身大の周産期医療を描いた点で、全国の産婦人科医師達には結構好評なドラマだったのでした。

シリーズ最終回は死戦期帝王切開(心肺停止状態での帝王切開)でしたね。

<ドラマのストーリー>

入院中の患者さんが突然、医師達の目の前で心肺停止状態となった。
しかし緊急の死戦期帝王切開(心肺停止状態での帝王切開)により、お腹の赤ちゃんは生きて生まれてNICUへ入院した。赤ちゃんは未熟児だけどNICUで元気に育ちつつある。
母親も幸い手術中に心臓の拍動が復活した。数日後には母親もICUから一般病床へ移動となった。後遺症も無く、母子ともに無事に退院できそうだ。

めでたし、めでたし、パ チパチパチ。

<現実のストーリー>

以前、救命救急センターがある病院で、総合周産母子センターの部長をしていた頃の経験談です。

ある日、当直室で就寝中、午前2時に救命救急センター看護師からの電話を受けました。
「妊婦が自宅で倒れて救急車要請。心肺停止のため救急隊員が心肺蘇生しながら搬送中、3分後にER到着しまーす。」
寝惚けまなこで救命救急センターに出向くと、救急車が到着するやいなや、殺気立った救急隊員たちがなだれこんできました。

母体心電図は完全にフラットでしたが、妊婦の腹部をエコーすると----胎児は生きている!
推定2200gだけど胎児心拍数60bpmの危機的状況です。2回目の電気的除細動にも母体心電図が無反応だった所で帝王切開を即断しました。

心肺蘇生の続行を救急医にお願いし、イソジンボトルをお腹にぶちまけるやメス1本で無麻酔・無止血で超スピードの古典的帝王切開を行いました。幸い生きて生まれた児はNICUへ送られました。ER到着から胎児出生まで15分でした。心肺蘇生を続行しながら閉創しましたが、懸命の治療にも関わらず、母体の心臓が再び動く事はありませんでした。

死亡診断書に記入し終えてふと気が付くと、救急室には夜明けの光が差し込んできました。
徹夜明けの眼には眩しい朝の光の中を、去っていく霊柩車をお見送りした光景が忘れられません。

<ドラマと現実の違いのワケは?>

ドラマと現実の結果の違いは何故でしょうか?それはドラマで妊婦さんが心肺停止したのが、

①緊急即応体制にある大周産期センターに既に入院中の患者さんで、
②赤ちゃんが未熟児ながらも生存可能な妊娠週数で、
③時間帯が病院スタッフのマンパワー豊富な平日の昼間で、
④心肺停止の原因は治療可能なもので、
⑤ベッドサイドに複数の産科医師達がいる目の前で、心肺停止した。

というこれ以上無いような恵まれた条件が全て満たされていたからです。

実はこれらの条件が一つでも欠けると、母子共にハッピーエンドを迎える事は難しいのが現実です。
そういう意味で、このドラマは「よくできた脚本やなー」と逆に感心するばかりなのでした。

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